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平成23年 3月の一般質問

  通告に従って「地域農業の将来をどのように展望していくか」について一般質問を行いたいと思います。よろしくお願いいたします。
  日本の農業が「曲がり角」に直面しているといわれて、もはや数十年の月日が流れています。1970年代に始まった減反政策はその後名称をさまざま変えながらも40年以上にわたって日本の農業政策の根幹でありました。また戦後日本の食糧自給率は、米以外の農産物、小麦・大豆をはじめ飼料作物などの輸入が大きく拡大されたことによって低下の一途をたどってきました。

  農業従事者も高齢化が指摘されています。一般的な定年退職の年齢である60歳、現在では年金の問題もあってか定年を65歳に延長するという取り組みが進められていますが、その65歳をも上回る66歳という平均年齢に達しているのであります。つい最近まで60歳が農業後継者といわれてきました。60歳まで他産業で就業し定年になったら農業を始める、しかし今日では、高額な農業機械に大きな設備投資が求められ、所有する農地が農業機械の能力にはるか及ばない程度の面積でしかないという基本的な問題があって、なかなか農業後継者になりえないという現実になっていると思います。

  これは戦後の占領政策の一環である農地解放によって、「自作農主義」すなわち自分の耕作する農地は自分が所有するという考え方によって、平均1ヘクタール程度の自作農家がほとんどといっていいほど多数作られました。このことは牛や馬を使って耕作する時代には一定の歴史的役割を担ってきたと思いますが、日本農業はその後の高度経済成長の時を経てどんどん進化する農業機械を手に入れ、耕作できる農地が大きく拡大できるにもかかわらず、農地の所有権は動かないという独特の問題に直面してきたのであります。

  この背景には、狭い国土で高度経済成長したため資産としての土地という側面が拡大、農業の生産手段であるべき農地が資産の保全という役割を担い、また、高度経済成長によって蓄えられた資金が土地に向かって、土地の値段は絶対に下がらないという「土地神話」に支えられた、土地バブルとも言うべき環境の中に、個々の農家が所有する農地も巻き込まれてしまったと考えるものであります。

  農業と一口に言ってもさまざまなスタイルがあります。米作りをはじめとする土地そのものの持っている生産力に依拠した農業、いわゆる普通作。そして農地の面積という点ではその規模の大きさを求めない労働集約的な施設園芸や畜産などであります。最近の将来農業に対する議論では、1次・2次・3次産業を全部たした6次産業化ということがよく言われています。従来の農産物を生産するだけの1次産業だけではだめで、作った農産物を加工して販売する2次産業化の取り組み、さらに加えて作った農産物を食材にしてレストランなどのサービス産業にまで進出、事業の展開を図らなければ農業の将来はないのではないかという議論であります。

  たしかにこうした方法による付加価値の拡大によって農業そのものの再生をはかるということは大いに進めるべき展開であろうと思います。こうした取り組みの一環として、地の利を生かした農産物直売所等、農産物を加工して販売することも含めて、首都圏50キロ圏にある当市のカラーのある取り組みはないものかと考えるところであります。ただ、こうした取り組みは、野菜作りを中心にした農業での分野で大きく展望できることで、米や麦・大豆など土地の規模に大きく依存する農業では難しい点が多々あるのが現状ではないかとおもいます。

  本当に第4コーナーまで曲がりきったという今日の日本の農業にたいして、現政権は「戸別所得補償」なる政策を打ち出し、全国一律に直接農家にお金を配って農業者の所得を補償しようということであります。そして日本を「開国」するということで、TPPいわゆる環太平洋連携協定への参加を模索しています。当議会では昨年12月の定例議会において、2件のTPP参加反対の請願を採択し意見書を提出しているところであります。TPP参加の問題はひとり農業の問題ばかりでなく、原則関税撤廃という参加条件は多様な分野において議論が戦わされているところかと思いますが、特に私は農業、中でも土地の規模に依存する農業では、アメリカやオーストラリアなど耕作条件としての圧倒的な規模を持っている国々とは競争の環境があまりにも異なり、拙速に原則関税撤廃という参加条件でTPPに参加するということには大いなる疑念があり改めて反対の意見を表明するものであります。

  ただ、だからといって「戸別所得補償」によって日本の農業の将来があるのかといえばそれもまた大いに疑問であります。平均66歳の農業者は新規参入者が平均年齢に影響あるほどの人数にならない現状では、あと4年で70歳になるわけであります。ここ4・5年で農地の所有権の構造に大きな変化あろうということは考えにくいことですが、耕作者が激減していくことは容易に想像できることであり、土地の所有権はムリでも耕作権の集積による農地の集積をはかり、耕作条件を整備して担い手に耕作を委託できるような環境整備に取り組んでいかなければ農業はどうなってしまうのだろう、耕作放棄地が拡大し、農業が崩壊してしまうのではないだろうかと懸念するものであります。

  たとえの話ですが「子ども手当て」に莫大な予算をつぎ込みながら一方で、保育所の待機児童が多く存在するという問題があります。直接お金を配るよりも、なぜこうした環境整備が進められないのかと思います。確かに待機児童は0歳、1歳といった乳幼児ですからそれなりの設備も必要であり、なんといっても人手間のかかることですからということなのでしょうが、であればこそこうしたところに財政的な配慮をすれば、それこそ雇用の確保や仕事の拡大につながり景気対策にもなろうというものではないでしょうか。

  農業の分野においても同じように、「戸別所得補償」によって直接お金を配るよりも、耕作条件整備のための土地改良に取り組むことこそが行政のやるべきことではなかろうかと考えるものであります。土地改良によって1枚、3町、5町の田んぼを作る、そして会社などの法人を含めた担い手の育成を図り、諸外国とも勝負のできる強い農業を育てていくことが求められていると思います。

  よく日本は資源のない国だと言われています。しかし日本は「水」という点ではまさに資源大国であります。砂漠化が進行したり個人の土地所有を認めない中国が、日本の山林や水資源をもとめて土地の買収に乗り出しているという報道が時折話題となっています。ことほど左様に日本には豊かな水資源があるわけであり、米が別名「水稲」といわれるように水の稲であり、水がふんだんに有るところに水田、すなわち水の田が出来、水田によって水稲という米が作られるわけであります。

  米は日本人の主食でありますが、まさに米を作るに適した国土を持っているのが日本という国だと思います。麦や大豆は圧倒的に輸入されている現状ですが、米はこうした恵まれた環境に支えられて100%自給しているのであります。この水田農業をどう展望するかが日本農業のこれからにとって最大の課題であると考えるものであります。 いずれにしてもこうした問題は、国の政策すなわち国策によって取り組まなければならない問題で、一地方自治体でどうこうできる問題ではないのでありますが、一方、農業ほど地域の環境(地域資源)によって大きな差の出る産業はないのではないかと思います。水資源確保の問題やその年その年の天候によって左右される産業ですから、地域の対応によって大きく変わってくるのであります。

  常総市でも例年予算の規模はいろいろですが、米の生産調整にたいする補助金を予算化しています。国の奨励金に上乗せして市独自でもこうした補助金を支出して政策誘導をはかっているところかと思います。ただ、地域農業を取り巻く環境が待ったなしの状況になりつつある今日、なんとしても取り込まなければならない問題は、いかに耕作地を集積し担い手が希望を持って農業に取り組めるよう、土地改良を含めた耕作条件の改善が行えるかどうかということが喫緊のテーマになっているのではないかと考えるものであります。

  さらに土地の所有権という視点から農地の集積を阻害している問題について考えてみたいと思います。自作農という耕作者が土地を所有すべきであるという経過は先ほど述べたとおりでありますが、歴史的経過を経て今日では農家が自分で所有する土地を耕作せず、資産としてのみ保有しているケースが拡大しています。であるならば、帳簿上だけ土地の所有権が確定していれば、実際に耕作出来る土地は、所有者毎の畦畔ブロックなどを取り払い、耕作者ベースに大きな田んぼや畑を作るべきなのです。しかし、土地改良もされてなく、また地籍調査が行われていないところでは、登記上の面積より現況面積に「のび」と呼ばれる面積の差があったりして、耕作農地の一元化を阻んでいるという問題もあるのではないかと思います。地籍調査の実行が個人の所有権と面積を確定することが出来るわけでありますから、そうした地籍調査の推進と農地の集積を協同して行い、土地改良を含めた規模の拡大を行って耕作条件の整備が推進できないものかと考えるものであります。

  また、農地の所有権の問題では株式会社等の法人所有の問題や、その面積規模による新参入の制約があります。これまで農地法では50アール以上でなければ農業の新規参入は認めず、農業者でなければ農地の取得は認めないということでしたが、農業への新規参入のハードルを下げるため、一昨年の農地法改正によって、市の農業委員会が面積の最低条件を独自に決めることが出来ることとし、全国的には30アールにしたところや、10アールでもいいではないかというところも結構出てきたようであります。いずれにしましても法人を含めた新規参入を拡大し、担い手を育成していくことが今後の農業に不可欠の課題であると考えるものであります。
  こうした観点から以下、具体的な質問をしたいと思います。

@ TPPへの参加が検討されている今日、当市にとって「農業」というものをどのように位置づけているか。
A 耕作条件整備のための土地改良を積極的に進めるべきと思うが、国の補助金や個人負担などの財源問題も含めどのように考えているか。
B 地籍調査の推進が農地の集積に役立つような協同の取り組みは出来ないものか。
C 一昨年の農地法改正によって農業への新規参入が緩和されたようだが、あらたな担い手の確保という点でどのように評価しているか。
D 農地の所有権という点でも、地方自治体の農業委員会が面積用件を決められるようになったと聞いているが、当市の農業委員会はこの問題にどのように取り組んでいるか。

以上、農業の将来展望に関する質問をいたしました。宜しくご答弁をお願いいたします。


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