通告に従って地方自治体における2元代表制について一般質問を行いたいと思います。
このところ全国的に、地方自治体における首長と議会の対立という問題が話題になっています。とくに九州鹿児島県の阿久根市における竹原市長と議会の対立は、議会における市長の不信任案の可決、議会の解散、市民を巻き込んだリコール運動の展開など、泥沼の様相を呈しています。ではなぜこのような事態になっているかといえば、経済の低迷によって市民生活が厳しさを増してきている中、相対的に役所の待遇等が優遇されているということで、市長が自らの待遇を含め、議員、職員のボーナスを半減、すなわち50%カット、議員報酬を福島県矢祭町のように日当制にするという条例改正案を提出したが議会がこれを否決。また、部や課ごとの正規職員数と人件費の総額を掲示板等に張り出し、職員数と人件費が大きすぎるということを市民に対してアピールしたところ、これを無断ではがした職員がいて、この身分保障のある公務員を懲戒免職にしたことなどが、連続するトラブルのことの起こりのようであります。
その後市長は提案する議案をことごとく否決する議会に対し、議会を開かず専決処分という手法で望み、副市長の選任を初め、なんと議会の議員定数を16名から6名にするということまで専決処分したということであります。議会の承認を得るという手続きをまったく無視した独善的な行政運営をしているわけですが、この市長、不信任案の可決によって失職したものの出直し選挙で再度当選しています。こうしたことの背景には、地方行政の予算が厳しさを増す中で、議員も職員も多すぎるのではないか、報酬も高すぎるのではないかという市民感情があって、市長の独善的手法であってもこの改革を支持する多くの市民がいるということなのだと思います。
さらにもう1つ、全国的に話題となっている自治体に名古屋市があります。ここの河村市長も10%の市民税減税、市議会議員定数と報酬の半減などの政策で議会と鋭く対立、市長主導によって議会の解散請求運動に取り組んで話題となっています。10%の市民税減税という政策を実現するため、議員ばかりではなく職員の人件費を抑えて財源を捻出するという考え方のようであります。また名古屋市では「住民参加の自治体運営を」ということで、独自に地域委員会というものを創設しています。地域委員会の委員は、住民の投票で選ぶ「公募委員」と学区連絡協議会から推薦され、住民の信任投票で選ぶ「推薦委員」で構成されます。任期は2年で報酬はなく、ボランティアですが地域の規模に応じた地域予算が割り当てられ、この予算の使い方を自分達で決めることが出来るというものであります。
名古屋のような大都市では市民税の減税という政策も成り立つのかも知れませんが、多くの地方自治体では、地方交付税に支えられているのが実態でありますから、減税の議論にはなかなかならないと思います。それどころか地方交付税が厳しくなる中で、行政運営のコストを捻出するための行政改革に取り組まざるを得ないというのが現状であろうかと思います。いずれにしても、地方自治体における首長と議会の対立という点で、全国にはいくつかの突出した自治体があるわけですが、これらが例外的な自治体であるということの出来ない、地方における共通した環境にあって苦慮しているのが、多くの地方自治体の実態であると考えるものであります。
地方自治体の首長の選び方は、大統領制に似て1人が選ばれるわけですから、劇的に変わる可能性がありますが、議員の選挙は大選挙区ですから、1回の選挙で急に構図が変わるということは起こりにくいと思います。劇的に変わる仕組みと劇的に変わらない仕組み。こうしたバランスが2元代表制の良さともいえるのではないかと思いますが、デフレが進行し物価が下落すると同時に給料も減る、そして行政の世界でも予算のパイを奪い合う時代には、人件費コストの削減をラディカルに進めるトップリーダーが支持を集めるという結果を生み、劇的に変わらない土壌の議会がこうしたトップリーダーの抵抗勢力となって、地方自治体に大きな軋轢を生んでいるのが今日ではないかと思います。
こうした地方自治体における2元代表制というものの改革案として、さまざまな立場から、いくつかの案が提案されています。大阪の橋下知事は、2元代表制に変わる「議員内閣制」といものを提案しています。これは議員の1部を副市長や幹部職員に政治任用することで、首長と議会が自治体経営の責任を共有するというものであります。また埼玉県の志木市では現在の法制度上は不可能なため、構造改革特区として市長を廃止して、議員の中から「シティマネージャー」という行政の代表を選ぶという提案もありました。いかに2元代表制の問題を克服し、住民の意見を的確に政策に反映させるかという立場でいろいろな議論があるわけですが、どれも一長一短で、なかなかこれといった方向が見当たらないのが現状かと思います。
経済環境が悪化の一途をたどる中で、行政改革がとかく議論されているわけですが、特に矢面に立っているのが人件費コストではなかろうかと思います。そして、その象徴的立場にあるのが市議会議員であります。国会や県会でもその議員定数の削減はことあるごとに議論はされるものの遅々として進まない現状にあります。一方、市町村の議員数は平成の大合併によって激減し、年金制度も破綻目前で、制度の廃止が検討されるなど劇的に変わってきています。そしてまた今日、多くの自治体でさらなる議員定数の削減が議論され実施されています。これは単に定数の問題ではなく、市町村議会そのものの存在意義が問われているというのが今日の状況ではないかと思うところであります。
議員の定数を決めるのも議会であります。今回当市では6月議会に提出された6件の「議員定数の削減を求める請願」を審査するという目的で、議員定数等調査特別委員会が組織されました。私もこのメンバーの一員として参加しているわけですが、議員自らが定数を削減するということは、自らの存在そのものを否定するわけでありますから、反対するのが普通であると思います。しかし、こうした議論が単なる自己保身で、行政改革そのものを否定しているのではないかと捉えられるのが今日の環境であり空気であります。何人減らせば適当かという議論の根拠はどこにもなく、近隣市町村の状況などを勘案して落としどころを決めるというのが現実的テーマとなっているわけであります。
行政の抱える問題はまさに多種多様なものでありますから、一人一人の議員がこれらの問題にすべて精通することは不可能なことでありますから、議員総数が激減することは議論が形骸化する危険性もあり、民主主義の観点からも好ましいものとは思えません。定数の削減ばかりが議論される今日、むしろ定数を増やし多くの議員をつくる。コストの問題があるならば、それこそ報酬を半減し休日に議会を開くなど、議会のあり方を大きく変えてみる取り組みなど、新たな今日的展開はありえないものかと考えるところであります。
名古屋の地域委員会でありませんが、住民参加のあらたな方策を、議会改革と共に考えていく必要があるのではないかと考えるところであります。地域委員会とは異なりますが、当市でも補助金検討委員会なる組織をつくり、補助金削減の取り組みを進めてきたと思います。市の補助金についても本来、議会が予算審議の中で検討すべきものであると思いますし、かりに事前に検討し答申するにしても、他の審議会のように議員も参加した中で行われるべきと感じていたところであります。いずれにしても議会の規模が縮小し、諮問団体等の議論による答申などが拡大することによって、議会の役割が形骸化しつつあり、議会はいらないのではないかという評価が地方自治体を取り巻き、定数削減の要求となっているのではないかと思うところであります。
いずれにしても、単に議員を数名減らしたところで、財政上の問題を議論できるほどの改革になり得ようもなく、いわゆる象徴的な取り組みというべきものであることは言を俟たないところであります。議員定数削減そのものが目的化してしまうことは本筋ではなく、行政改革の1つの出発点としてとらえ、今後の改革の礎とすることが重要なことではないかと考えるものであります。
@ 議員定数とその報酬は、どの程度が適当と考えているか。
以上、3つの質問をいたしました。宜しくご答弁をお願いいたします。
地方自治体は首長と議員が別々に住民の直接選挙で選ばれるという仕組みで2元代表制と呼ばれ、よく車の両輪にたとえられています。首長と議会がバランスよく調和して、行政運営に当たってきたという地方自治体の戦後の歴史があると思います。古来より日本人は「和を以て貴しと為し」という合意形成を重要視する資質がありました。「談合」という言葉は今でこそ悪だくみと言ったニュアンスで捕らえられていますが、話し合いを重視し仕事を分け合うという調整機能は一種のセキュリティ対策であり、経済成長という分配するパイが拡大する時代には、こうした制度がうまく機能してきたといえるのではないかと思います。しかし今日、この地方自治体における2元代表制というものに大きな疑問が投げかけられ、民主主義のあり方とともに新たな制度設計が求められているのではないかと考えるものであります。
こうした観点から以下、具体的な質問をしたいと思います。
A 専決処分のあり方(権限の範囲と時間的制約)についてどのように考えているか。
B 行政執行における諮問団体(補助金検討委員会等)の役割についてどのように考えているか。
○総務部長(塚田 威君) それでは、秋田議員の御質問の地方自治体における二元代表制についての議員定数と専決処分のあり方について、順次お答えをいたします。
次に、2点目の専決処分のあり方についてお答えいたします。地方自治法第179条に規定されている専決処分に関しましては、本来は議会において議決すべき事件について、議会の議決が得られないときの補助的な手段として長に認められている権限であります。このため、専決処分の範囲は、条例の制定、改廃や予算決算など、自治法第96条第1項各号に掲げられているすべての議決事件のほか、法令の規定に基づいて、行政機関としての意思決定をする議決、承認などが対象になると解されています。
また、専決処分をすることができる場合につきましては、一つ目には議会が成立しないとき、二つ目には自治法第113条ただし書きの場合において、なお議会が開くことができないとき、三つ目には特に緊急を要するため議会を召集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、四つ目には議会において議決すべき事件を議決しないときの四つが条文に規定されておりますが、これらの要件のうち、議会を召集する時間的余裕がない場合に関しましては、その時間的余裕の判断は長が行うことになりますが、これはいわゆる自由裁量ではなく、客観的な理由に基づいて判断されなければなれず、その判断の客観性が誤っている場合には議会の議決権の侵害に当たるとされております。このため、特に緊急を要する議決事件につきましては、臨時議会を開催するための日程を調整している間にその事務の実施時期を失ってしまい、事業に支障が生じてしまうような客観的事実を十分に確認した上で、法令に基づいて適正に執行していくべきであると考えています。
一方で、長がした専決処分に関しまして議会の承認が得られなかった場合であっても、その処分の効力には影響がないとされております。これは、議会の承認が得られないために長がした専決処分が無効になるとすれば、その処分に関係するものの利益を害し、行政行為の安定を損ない、自治法に定める専決処分の制度が意味のないものになってしまうとする理由からのものでございます。しかしながら、あくまで専決処分は議会の議決権の補充的な手段として長に認められた権限ですので、法の規定を逸脱した処分は到底認められるものではないと考えております。なお、目的額が200万円以下の和解などにつきましては、自治法第180条の規定に基づいて、平成18年9月の定例会におきまして、市長の専決処分事項としての指定の議決をいただいておりますので、これに該当する案件に関しましては、すべて専決処分した上で、報告の形式で本会議へ提出させていただいておるところでございます。
今後も事業を実施する上で、国の施策などに基づいて、緊急やむを得ず専決処分をする場合につきましては、議員の皆様に十分な御説明を差し上げた上で、法令に従って適正に行ってまいります。以上でございます。
市議会議員の定数につきましては、人口の増減や財政状況をはじめ、総合的な見地に立って慎重に検討すべきものであると考えますが、現在、議会において議員定数等調査特別委員会を設置し、調査・審議を進められているところでありますので、執行部では考えておりません。また、議員報酬につきましては、市特別職報酬等審議会に諮問し、その意見を聞いて改定を行うものですが、議会議員の職務は、本会議や委員会での議案等の審議のほか、各種の調査研究や市民の意見を聞いて市政に反映させるなど議員活動は広範囲に及んでいるところであります。その役務の対価としての報酬につきましても、現時点では改定を行う予定はありません。
○企画部長(中村 隆君) それでは、秋田議員のB各種審議会、委員会の役割についてお答えをいたします。当市におきましても、各種分野において審議会や委員会を設置しておりますが、議員の御質問にある各種委員会につきましては、行政委員会ではなく、執行機関の附属機関としての委員会と解釈させていただき、答弁させていただきます。
市議会と審議会及び各種委員会の役割としては、市議会は市の行政需要を的確に把握し、それを行政施策に反映させるため、市民生活のさまざまな問題について調査・審議し、市の意思を決定する議決機関であります。一方、審議会や委員会につきましては、まず、審議会は条例により設置が義務づけられているものもあり、団体の代表や学識経験者等を委員とし、行政に関する重要な事項を審議しております。また、各種委員会につきましては、市民目線の市政、市民協働の市政実現のために、事業等の計画・立案の段階から広く市民の皆様に参画していただくことを目的としております。なお、審議会に関しましては、市の将来にかかわる特に重要な政策・施策の立案等について諮問され、答申を行うことから、その多くが市議会から議員の御推薦をいただく規定となっており、委員として審議に当たっていただいているところでございます。以上です。
御答弁ありがとうございました。議員定数問題については、これは調査特別委員会がやられているということでございますが、今回の特別委員会は請願ですか、各地区の区長さん方の6件の請願があったことに〔「陳情だよ」と呼ぶ者あり〕――陳情ね。そういうことがあって、そういう委員会がつくられたということなんですが、例えば隣のつくばみらい市の市長は、市長選の公約に議員定数の削減を掲げていると、こういった経過もありますね。それから、市長には議案の提出権はあっても投票権はないという、要するに二元代表制のあり方、こういったことについてひとつ市長の御所見を伺えればというふうに思います。
あと、今回、職員の給与等も削減される内容が決まったとかありますが、やはり内容的なものは人勘の内容でやっているんでしょうけども、ほんのわずかというふうな評価もあろうかと思いますけれども、やはり減るというのはなかなか人間、しけるところがあるのかなというふうに考えておりますが、現在の財政上の問題でそういったレベルで本当に大丈夫なのかというような議論も多々あるわけですよね。もっと強力に削減しろみたいな意見もあるわけで、議員定数の削減あるいは報酬削減、これは市長も自ら一定の報酬を削減するということに取り組まれているわけですが、こういったことは一つの象徴的な取り組みであろうと思うんですね。例えば1人当たり700万円程度のコストがかかれば、議員2人減らせば1,400万であるとか、あるいは4人減らせば二千数百万というような形の確かに経費の削減にはなるわけですけれども、だからといって、このコストが市行政全体の財政運営にどうかという視点で考えれば、それがそれほど大きい内容のものであろうとは考えにくいと思います。
つまり、象徴的なものですから、市長はじめ報酬の何%削減であるとか、あるいは議員定数を削減する、報酬を削減するというようなことも一つの象徴的なことだろうと思いますので、これが目的ではないと。要するに、そういったことで行政改革を進めるという立場でまず象徴的にこれを推進すると。こういう形なので、これらを受けて、今後どういうふうに行政改革をやっていくのかということが非常に問題になるのではないかと、こういうふうに思うところでございます。
したがって、二元代表制についての所感、それからもう一つは、今議会において、来年の統一地方選挙の定数削減が何名か削減ということで常総市議会においても決定されるであろうと、こういうふうに考えておりますが、こういった一つの象徴的な取り組みを受けてこれからどうしていくのかと、こういったことについての市長の御所見を伺えればと、このように考えます。
○市長(長谷川典子君) それでは、秋田議員の再質についてお答えいたします。
まず、二元代表制についての考え方はということですけれども、これは原則的にはなりますけれども、首長と議員、議会は両方が市民の代表というようなことですので、対等な立場で市政が正しい方向に進んでいくということ、これが原則だというふうに思います。そういう中で、やはりお互いに情報交換なり、あるいは意見交換などをして今後とも積極的に行いながら、市政がよい方向に進んでいくようにしてまいりたいと思います。そういう中で、いずれにいたしましても、こういうことの基本的な考え方といいましょうか、基本的なことは市民に顔を向けていると、市民が主役なんだと言うことだと私は思っておりますので、そういう姿勢をいつでも持ちながら、忘れないで、そこに私の考え方の主力を充てていきたいというふうに思っているところでございます。
また、議員定収についての御質問がされておりますが、これはやはりどこの自治体でもそうだと思いますけれども、行財政改革の中でのいろいろな取り組みの一つだというふうに私はとらえているところでございます。いろいろな意味で、議員定数あるいは報酬の削減もそうですけれども、いろいろなことに精査して、そして行財政改革に今後とも取り組んでまいりたいと存じます。以上です。
ありがとうございました。九州・阿久根市のように専決処分が進められると甚だ困るなと思っておったところでございますが、非常に議会を重視するというスタンスの答弁をいただきまして、ありがとうございました。
私も2期8年議会を努めさせていただきますが、2年ずつ交代するので、委員会は最初が総務委員会、それから文厚委員会、建設委員会、環境経済と渡り歩きまして、ぐるっと一回りと。要するに、合併があったので、文厚は1年弱で、建設が3年と長かったんですが、そういう中で感じることは、例えば広域農道の橋げたの予算審議がありまして、あれが一つ建てると2億とか3億とかね。ボーリングしてみたら中がぐずぐずしていて補正予算を組んだという経過があったんですが、そういったことを建設委員会で審議してもなかなか判断が難しいといいますか、非常にそういったところを幾つか感じますよね。例えば文厚でも、国民健康保険の総予算枠を広げた議論が必要なのではないかなと。そういった意味で、本当にどんどん議員が削減されていくとさらに議会の議論というのは形骸化してしまうのではないかというような危惧を持っているわけなんです。
いずれにしましても、非常に地方議会が難しい中で、行政改革を進める一環で市長が取り組まれているということですが、ただ単に2名とか4名とか、いろいろ議論がありますけれども、世の中の空気といいますか、そういうことで単純に落としどころが決まるのではなくて、もう少し斬新な提案がないものかなと考えるところで、いろいろ今後の構成を検討していただくようお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。