通告書の内容に従って、平成16年度から大きく転換される、米の生産調整政策(新たな米政策)へ市としてどう
取り組んでいくかについて、質問をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
1971年から始まった米の減反政策は、すでに33年の歴史を数え、三分の一世紀にも達しています。この間、
約6兆円という膨大な予算を投入したにもかかわらず、1人当たり年間のコメ消費量が1962年の118.3
キロあったのが、2000年には64.6キロと実に半分の量にまで落ち込むという消費の減退によって、米あ
まりが解消されず、水田面積の三分の一を超える減反が実施されていることはご承知のとおりであります。良質
な水田を多く抱えている当市は、いうまでもなく米の産地であり、作れる条件がありながら作らない、作らせな
いという政策を、長年に渡り推進されてきた現場の方々のご苦労に対しては、心から敬意を表したいと思います。
減反対策というのは農家を、稲作から他作物への作付け転換へ、誘導する政策であったと思います。作付けの転
換が進めば、国の財政支出を伴う減反政策は必要なくなります。ところが、主な転作作物と見られていた麦、大
豆、飼料作物は輸入品に対抗できず、農家にとっては収益性の高い作物とはなり得ませんでした。また一方、国
の管理のもとでの稲作は安定的な収入が得られる魅力的な作物であり、稲作技術が高度に発達し、少ない時間と
人手でも生産できるようになったこともコメの作物としての魅力を高め、30年以上にわたる減反政策が続いた
ものと思います。
こうした状況を打開するべく国は、平成16年度からの「新たな米政策」ということで、従来の減反政策を大き
く転換させようとしている訳ですが、この背景には、バブル崩壊後の日本経済の低迷によって税収が伸びず、こ
れまでの政策を続けていくのは財政的にも困難な状況にあることが上げられると思います。先ごろ総理に再選さ
れた小泉首相のいわゆる「小泉改革」では、民間にできることは民間に、地方にできることは地方に、と「三位
一体改革」すなわち、2006年までに約4兆円の国庫補助金の廃止・削減、交付税見直し、税財源移譲によっ
て地方分権を推進するとしています。今回の「新たな米政策」は、こうした考え方に基づくものであり、また先
取りするものでもあると私は考えています。
元来、農業は自然を相手にした産業であり、気候や地域の土地条件など、さまざまな背景を持っているわけで、
これまでの減反政策のように一律にやろうとしても、ムリが多いのは当然のことだと思います。国は、平成22
年度(西暦2010年)までという21世紀の最初の10年間に、「米作りのあるべき姿」を実現し、21世紀
のわが国の食料供給体制を築き上げようということのようですが、財政的にも困難な状況であり、徐々に生産調
整すなわち減反政策から撤退し、将来は農業生産者団体が自ら農業者に生産目標数量を配分するのが、「本来あ
るべき姿」であると言っています。しかし、財源的な背景もなく農業生産者団体が自ら生産調整に取り組み実現
できるとは考えにくいことであります。行政が手を引くことによって、生産調整は崩壊し市場経済にゆだねるこ
とは、米価格が大きく下落することが避けられないのではないかと考えます。
日本の人口が2006年をピ−クに減少に向かうと予測されており、米の消費動向から見ても、今後の米作りを
展望したとき、産地間の競争という厳しい世界が待っていると思われます。安心でしかも美味しい米作りができ
なければ、米の産地として生き残れないような環境になるのではないか、そして、地方、地域の果たすべき役割
がますます大きくなって来ると思います。
こうした大きな流れの中で、16年度がスタ−トするわけですが、そこには政策の変更に伴う様々な矛盾や問題
があり、過渡期であるここ数年をいかに乗り切り、将来の地域農業を展望するかという視点でいくつかの質問を
したいと思います。
(1) 水海道市はここ数年、国の転作目標については未達成だが、これまで取り組んできた生産調整について
どのような評価をしているか。また、市としては未達成だが三妻、坂手、内守谷地区など達成している地域と、
大生、五箇地区など達成率の低い地域に分かれてきたことについてどう考えているかお尋ねしたい。そして、達
成の場合と未達成の場合の国、県の市町村に対する扱い(ペナルティや報奨)はどのようになっているか。つま
り、国の個人や地区に対する奨励措置以外に、市町村に対する具体的なペナルティなどはあるのかどうかをお尋
ねしたいと思います。
(2) 次に、新たな米政策では、「売れる米作り」などと、あたかも米の産地作りを推奨するかのような誤解
を招きますが、産地作り交付金の産地とは、いうまでもなく米以外の作物の産地であり良質の水田が多い当市で、
麦以外で産地化できる作物の展望は難しいと思われますが、どのような産地作りを考えているかお尋ねします。
(3) また、16年度からの配分は転作面積ではなく生産数量だというが、国が県に、県が市に配分はい
いとしても、現場である市町村では数量の配分は現実的政策としては困難であります。なぜなら、どれくらいの
米ができるかは収穫してみなければ分からないし、豊作になって収穫数量がオ−バ−したら、計画未達成などと
いう馬鹿げた政策はありえないからであります。計画の時点では面積に換算するほかなく面積レベルで評価する
ほかないわけですが、作れる面積と転作面積という表、裏の言い方の違いで、政策が実質的にどう変わるのかと
いう説明。そして、水海道市が助成している「全国とも補償」が制度的になくなるため、救出金の半額助成はな
くなるわけですが、産地作り交付金の使い方や、市独自の個人や地区、あるいは団地化に対する助成などの見直
しで、今後も生産者が納得して生産調整に協力できる依頼ができるのかどうか、見通しをお聞かせ願いたいと思
います。
(4) 特に、平成15年産の米は、冷夏であったため10年ぶりの不作となりました。10年前にもたった1
年の不作で米が暴騰し、タイ米の輸入など大騒ぎした記憶がよみがえるところであります。今回の不作は10年
前ほどの状況にはならないと思いますが、当地域のコシヒカリは2万円を超える価格で取引されました。こうし
た中で、米が余っているのに、加工米という米を作ると減反面積の実績にするというおかしな政策がつづいてい
る事に疑問の声があがっています。まったく同じ米が生産調整に協力するということで8千円となり、協力しな
い人が2万円以上で売っているのです。16年度にもこの加工米の配分はなくならないのではと思いますが、こ
の加工米の取り扱いについて、市独自にメスを入れる考えはないか。また、全国とも補償がなくなるわけですが、
作る人と作らなくてもいい人、作る地域と作らなくてもいい地域など、市独自にいわゆる「地域とも補償」等の
調整を行う考えはないかお尋ねいたします。
(5) いずれにしても、15年度の不作で全国的に米泥棒が多発するなど、備蓄のレベルの問題もあるでしょ
うが、それより美味い米へのニ−ズがおおきな高まりを見せ、地域間の差がだんだん顕在化してきているのが今
日であると思います。先走ったいいかたになるかも知れませんが、農業県である茨城県有数の、小貝川流域穀倉
地帯である水海道、谷和原、伊奈という地域を、市町村の合併を踏まえながら、米の銘柄米産地として育ててい
くことが、将来の地域農業の大きな展望にならなければならないと考えるものであります。産地作り交付金のた
めの産地ではなく、米の銘柄産地をどう展望するかということを考えていかなければならない時代になったので
はないか。また、こうしたことが今後予想される、米を取り巻く状況の激変に耐えうる地域づくりになるのでは
ないかと考えています。地域農業の明るい将来を祈念しつつ、今回の質問を終えたいと思います。
よろしく、ご答弁をお願い致します。
(答弁) 環境経済部長(堀越 操君)
続きまして、第2点目のご質問についてですが、昨年12月、国が米政策改革大綱を決定し、その内容では、20
10年度のあるべき米作りの実現に向け、消費者や市場を重視し、安定的な米の供給ができるよう、関係者自らが
創意工夫を発揮し、積極的な取り組みを行うことが必要と定めております。そして改革のポイントとして需要に応
じた米作りをおこなうこと、それぞれの地域の水田農業のあり方や産地作りについて水田ビジョンを作成すること
としております。このビジョンについては、市、議員、農業委員、土地改良代表、担い手等で水田農業推進協議会
を設立し、幅広く意見を聞いて策定をすることとなっております。ご質問のなかの水田の多い当市については、ど
のような産地作りを行うかでございますが、米については、良質米生産、産地作り対策については、麦、大豆、飼
料作物などを中心に推進をしていきたいと考えております。
3点目のご質問の配分についてでございますが、今年度までは転作面積での配分であったため、豊作の場合、米が
余ってしまい、そこで16年度からは生産数量を目標に生産調整することとなりました。農家の皆さんへの配分に
ついては、数量を共済細目書により反あたり基準数量をもとに面積配分をいたしますので、農家のかたがたは、作
付けできる面積の観点からご理解が得られることと思っております。
4点目のご質問で、加工用米については、議員ご指摘のとおり、当市は良質の水田が多く、米の産地であることか
ら、加工用米としても産地作り対策の一環として政策に乗るのも一つの考えだと思います。地域とも補償につきま
しては、米政策改革大綱の中では大変難しい問題であり、今後、推進協議会において慎重に検討をしていきたいと
考えております。
5点目のご質問の米の銘柄産地の展望についてでございますが、2点目の質問事項の中で良質米生産とお答えいた
しましたが、良質米生産に欠かせない適正乾燥、グレーダー等の統一などの品質管理の徹底を行い、産地間競争に
負けない良質米産地の形成を図っていきたいと思いますのでご理解を賜り他と存じます。以上でございます。
それでは、秋田議員の平成16年度から大きく転換される米の生産調整政策(新たな米政策)へ市としてどう取り
組んでいくかということで、第1点目から第5点目、順次答弁をさせていただきたいと思います。
第1点目のご質問であります水海道市が取り組んできた生産調整についての評価と達成、未達成に対する国、県の
市町村への扱い等についてお答えをいたします。当市の生産調整につきましては、議員ご承知のとうり平成10年
度より6年連続未達成となっておりますが、その間の達成率を述べさせていただきますと、平成10年が96.8
%、11年が95.4% 12年が94.2% 13年が93.3% 14年が93.2%、そして当年15年が
現時点におきましては91%と年々低下をしている状況となっております。しかしながら、配分面積が年毎にふえ
る一方、未達成とはいえ90%以上の協力をいただいております。こうした生産調整協力者のおかげで現在の米価
が支えられているものと考えております。また、当市が未達成だった6年間に対して、国、県からのぺナルティー
等については、集落センターの建設、その他、農業施設の整備事業等が生産調整達成の優先順位があり、不採択と
なったりもございます。
(再質問) 御答弁ありがとうございました。
16年度の新たな米政策ということなんですが、言い方が、売れる米作り、水田農業ビジョン、産地作り交付金と
いうことで、今の一般の生産者の方々が、もう転作はやらないでもいいんだ、もう終わってしまったんだという理
解があって、非常に紛らわしい言い方であります。要するに、産地作りというのは、水田を転作して、ほかのものを作
れといっているんですが、どうも言葉のニュアンスがそうでないような言い方にとらえられる、すなわち誤解され
やすいという状況下にあるのではないかというのを感じるわけです。
それともう一つは、先ほどもいいましたように、加工米。たまたま15年は不作だったものですから、結局、それ
に対する不平等感といいますか、ストレスというものがある中で、当然、16年の正月になったら、早々に各区長
さんを初め地区に、こういった減反政策を16年度も、結局、同じような水田作付面積と転作目標なんだ、結局ど
うなったんだといったことで、各地区の推進者の方々からいろいろとご意見が出るのではないかと予測されます。
したがって、そういったところを十分に配慮しながら進めていかないと、現場のストレスが大きくなるのではない
かということで、私も今回、この質問を取り上げさせていただいたんですが、やはり産地作り交付金といっても、だ
んだん国の予算も少なくなるわけですから、予算的な財源があって協力を依頼して、協力してくれた人に対しては、
こういうふうに配慮しますというのであれば簡単な話なんですが、だんだん予算がなくなった中で、こういった推
進をするということは、非常に知恵を出してやらないと現実的には難しい問題になるのではないか。国の交付金が
今までよりも総体的に予算が少なくなる中では、市のほうでも、財源負担、市でも財政は非常に大変だと考えます
ので、どういうふうな知恵を出して、これを進めていくのかということで、よろしくお願いしたいと思うんです。
それと、もう一つは、市のほうでは、今までは全国とも補償の拠出金に対しての半額助成、それから個人達成は
10アール当たり1,000円、地区達成が1,5000円、これはとも補償加入者のみということですが、
こういうし独自の助成、あともう一つは団地加算ですか、そういったものがあるわけですけれども、茨城県内の
あらゆる水田地域を抱える他市町村の補助金の内容と比較して、水海道の助成内容はどのようなレベルといいま
すか、どういうところにあると考えておられるか、その点だけをお尋ねしたいと思います。
(答弁) 環境経済部長(堀越 操君)
一方、今年は前年と違って冷夏による低温と日照不足の影響で米の作柄は、先ほど申し上げましたように10年
ぶりの不作となりました。このため米価は昨年と違って、本年11月の入札で茨城のコシヒカリは昨年の約5割
高となっております。60キロ当たり2万4,072円で落札をしております。昨年は品質が悪い上に全国的に
豊作だったため茨城のコシヒカリは毎回の入札で全量落札とならず、売れ残りが生じております。今年の米価が
来年も続くとは限りません。良質米の生産に農家が意欲的に取り組まなければ、売れ残りが生じるなど、他の米
産地に負けてしまうおそれがあります。粘りがあって光沢があるおいしいご飯と消費者に言われる良質米の生産
を定着させなければと考えております。あわせて、価格の安定を図るためにも計画生産に取り組まなければなら
ないと私は考えております。今年の不作で、収穫量の減少による米価がそれを実証しているものと考えております。
また、産地作り対策でございますが、産地作り対策でどう取り組んでいくかということは、今後、水田農業推進
協議会において助成金はどの作物にウエイトを置くか、それは今までの実績の方向で何か見えてきたような気が
するものでございます。ぜひ秋田議員、推進協議会においても、もし委員としてご出席される場合は、この点に
ついて真剣にご協議を願いたいと考えております。以上でございます。
秋田議員の再質問にお答えしたいと思います。
売れる米作りというもの、売れる米作りを目指すには、どういうものが売れる米作りかといいますと、まず良質
米の生産と計画的生産を主体的に農業者の方が取り組んでいかなければ実現できない。参考までに申し上げます。
議員御承知かと思いますが、昨年は、夏場の高温の影響もあって、茨城県では乳白粒が多量に発生しました。さ
らに乾燥が過ぎて胴割れ粒も起こすなど、品質低下が昨年は拡大したことは御承知かと思います。このためコシ
ヒカリの一等の比率は非常に悪く、茨城の平均一等比率は43パーセントとお隣の千葉の58パーセント、埼玉
の55パーセントよりも下回り、最も低い水準となっていることは御承知と思います。特に当市のコシヒカリの
一等の比率は14.9パーセントとさらに悪い結果となっております。こうした品質低下を防ぐには、生産者の
稲作の肥培管理の努力でも多く違うものと考えております。
いろいろと詳しい御答弁をありがとうございました。いずれにしましても、農村を取り巻く問題というのは、担 い手の問題等などを含めまして、今後、地域の大きな問題であると思います。本当に地域のストレスが爆発して しまうようなことになっては大変でございますから、そういった点で行政のできる範囲のことを効率的、効果的 にやるために多いに努力していただけるようにお願いしまして、質問を終えたいと思います。ありがとうございました。