1989年 1月
脱 皮

  へびにそそのかされて禁断の木の実を食べたために、エデンの園を追放されたというアダムとイブ。 聖書の冒頭に出てくる動物がこの蛇だ。また、日本の民話の中にも、蛇にまつわる語は多い。へびが なぜか美しい女や男に化けて村里に現れ、人の生活に入り込む話等である。「へび」と聞いただけで 身震いし、顔をそむける人も多いほど、一般的には忌み嫌われている動物だが、家の守り神として崇 める信仰もある等、遠い音から蛇は、人々にとって切っても切れないかかわりのある動物だといえよう。

  蛇は一年に二回から三回の脱皮をするという。この行為は蛇にとっても大変な大仕事で、二週間ぐ らい前からだんだんと体の色が黒くなり、エサも食べなくなる。そして、木の枝などにひっかけて、 口もとから靴下を裏返して脱ぐように脱皮する。この行為が出来なければ生きて行くことが出来ない という。脱皮は蛇にとって生きることそのものであり、脱皮するたびに成長をして行く。

  農業・農協にとって近年、情勢の厳しさはまさに「風強く波高し」である。カロリーベースですら五 〇%を割ってしまった食糧自給率。そうした中で議論されている米の自由化、農産物輸入の拡大。

  今年は巳年。蛇は口の中の骨がそれぞれゆるく繋がっているので、体の太さの五倍ぐらいのエサを 飲み込むことが出来るという。蛇にあやかり大きな難題を飲み込み、古い皮を脱ぎ捨てて「脱皮」する 年にしたいと願いたい。


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