1988年 6月
創られる顔

  ペットによく似た飼い主をまま見かける。愛情を持って動物を飼っていると、だんだん顔つきがその動物 に似てくるようだ。性格のほうも飼っている動物と似た人が多い。もっともペットが飼い主に似てくると いうより、飼い主が自分の性格や顔立ちに似た動物を選ぶというのが本当のところかも知れないが・・・

  人と人の間では、よく『似たもの夫婦』といわれるが、長い間夫婦の生活を続けていくとだんだん性格 ばかりでなく顔つきも似てくるという。アメリカの心理学者の共同アンケート調査によると、新婚の男女と、 銀婚式すなわち結婚後二十五年を経過した夫婦の男女を別々に提示して実際のカップルを当てさせたところ、 新婚のカップルより銀婚式を迎えたカップルの方が、はるかに大きな確率で組合わせが出来たという。この ことは長い間の共同生活で、だんだん顔つきや雰囲気が似てくることの一つの証明であるといえる。

  人間はその生活体験によって、たとえば喜怒哀楽の感情によってシワの出来具合が異なるそうだ。いつも難 しい顔つきをしている人は眉間に縦のシワが出来るし、ほほえみのある生活なら笑いジワが増える。こうし た微妙なシワが、表情とともに人の顔や個性のイメージを形づくっているということだろう。

  夫婦のように共通の体験が同じような顔を創る。なるほど顔の造りは親からもらったものでも自分の顔に は責任を持たねばならないということが、年とともにだんだん明らかになってくる。


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