1986年 1月
冷や汗・脂汗

  「汗をかく」ということが、ずいぶんと少なくなったように思える昨今。たぶん人々にとって代わっ て機械が労働するようになり、腰にぶら下げた手拭いがまっ黒になるというような仕事が、少なくなっ たせいだろう。

  使わないものは退化するという。人の体も汗という新陳代謝による体温調節の機能が、徐々に低下 してきているに違いない。思いきり汗をかいて仕事をした後には、飲むもの食べるものがみんなうま いし、健康で幸せな生活というものは、汗の代償に違いないと考える。いい汗をかきたいものだ。

  人の場合には、肉体の労働のみならず精神的緊張によっても汗をかくという。汗にもいろいろあるも ので、こうした汗は往々にして冷や汗・脂汗と呼ばれるものになる。

  先頃、千葉動労のストに呼応すると称して、中核派によるものと思われる同時多発ゲリラ事件が勃 発した。東京を中心に大阪・広島にまでおよんだこの事件、国鉄の通信ケーブルを切断するという戦 術で、高度情報社会の弱点を見事に露呈させ、一千万人にものぼる通勤通学客の足を瞬時に奪いとっ てしまった。そしてこの事件、犯人の中にはなんと現職の国鉄職員も含まれていたという。

  ガマの油で有名な、筑波山麓に棲息するという四六のガマ。このガマは鏡に写し出された自分のみ にくい姿に、タラリタラリと油汗を流すのだそうだが、どうやら、自分の姿に冷や汗(脂汗)を流し ているのは、筑波のガマばかりではないようだ。


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