半年間に二千万人の入場者を目論んで、はなやかに開幕した科学万博。これだけの人が来れば何を
やってもボロ儲けと、食堂をはじめおみやげ店、ホテル、駐車場と万博商戦もまた、たけなわであ
る。しかしどうやらこの商戦、順風満帆とはいかず、筑波おろしのような入場者の冷たい視線(風
圧)にさらされてなかなか苦戦のようである。
筑波おろしも有名だが、風と言って思い出すのは何と言っても、三国志による赤壁の戦いである。
中国大陸を横断する大河揚子江の流れに沿って東に向かい、中国全土を制圧せんとする曹操軍に対
峙するは、孫権・劉備の連合軍。この時、時期的には風上であるはずの曹操軍は、にわかに吹き出
した東南の風によって風下に立ち、丞相・諸葛亮孔明のはなった火船にまかれて大敗を喫したという。
自軍を有利に導くために風の向きまで変えてしまったと孔明物語は伝えているが、それだけ孔明と
いう人物が歴史上指折るほどの賢人であったということなのであろう。孔明の話ではないが、筑波
おろしの冷たい風(逆風)を南東の暖かい風(順風)に変えなければ、膨大な売り上げを見込んで
投資した事業家の諸氏が、あれよあれよと言ううちに半年間が過ぎ去ってしまいそうである。
「科学博を見に来ようという人たちだもの、そんなに甘いわけないじゃないの」とどこからか聞
こえそうである。どれ、会場ではサントリー館の鳥の映像が人気のようだが、駐車場で鳴いている
という閑古鳥でも見に行くか。