1985年 4月
誤  解

  目には目を、歯には歯を。と言えば、やられたらやり返せという意味であると誰もが考えるに違い ない。そして、この言葉から多くの人々がイスラムの社会を連想し、こうした論理こそが中東を世 界の火種にしていると。中東はイスラエルをとり巻くさまざまな争いから今日のイラン・イラク戦 争と、常に戦いの絶えない地域であるからだ。

  しかしこの目と歯、もちろん報復について語るもの であるが、その真意は、目をやられたら目以上の仕返しはするな、歯をやられたら歯以上の仕返し はするなということであり、報復合戦によって、争いがエスカレートすることを戒めることが、本 来的な目的であるという。

  日本には、「情けは人の為ならず」という言葉があるが、この言葉も最近誤解されつつあるようだ。 情をかけるということはその人の為にならない。世の中は厳しいということを知らしめるために、 情はかけない方が良いと解釈している人が以外に多い。人の為ならずの意味は言うまでもなく、情 はめぐりめぐって自分の所へ返ってくる。だから、人には情をかけるものだということだし、情は 人の為でなく自分の為なのだという意味である

  小は個々人の争いから大は国家間の戦争までさまざまだが、とかく争いには誤解がつきものである。 言葉の解釈一つとっても、さまざまな理解(誤解)がある。ましてや生きている人間(社会)のこ と。小さな誤解が大きな争いにならないようにと願いたい。


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