初めに神は天と地を創造された。それから神は「光が生じるように」と言われ、すると光があるよう
になった。旧約聖書の創世記による天地創造は、神が六日間のうちにこの世界を造り、七日目に休息
されたとしている。創造とは初めて、新たに造ることであり、出発が創造であるのは、本来神のみが
可能なことなのであろう。
人の世界においては、初めに創造があるということはなく、学ぶことの後に創造性が生まれてくるも
ののようだ。学ぶということはまねるということであろう。まね続ける中から、独特な新しいものが
生まれてくる。芸の世界をはじめ、世間で言う「老人」の年代になってから、豊かな創造性を発揮し
ている人々は枚挙にいとまがない。
時は過ぎ、昭和も早や六十年代を迎えた。教育についてとかく論議のつきない昨今だが、これまで
の教育は、与えられた問題をいかにうまく解くか、という所に力点がおかれ、ペーパーテストによる
評価が重要視されてきた。しかし今日、人々に与えられるテーマは、どこに問題があるかを見つけ出す
眼、あるいは問題そのものを作りだす能力といったものではないだろうか。悩み多き人生とは人の世
の常だ。不断に新しき良きものを求める創造性こそが、もっとも重要な資質となる時代を迎えつつあ
るのではないかと考える。
人それぞれに創るさまざまな人生である。歩んで行く先にあるのは、「老いてますます盛ん」か、
それとも「恍惚の人」か。