千年の昔、貴族文化の花開いた平安時代、美人の条件とは細い切れ長の目にまるみのあるふっくらと
した顔立ちであり、女性たちはそのふくよかさを競い合ったという。ただ、歴史学者樋口清之先生に
よると、平安時代の美女は栄養がゆきとどいてふっくらしていたのではなく、栄養のバランスがくず
れていたためのムクミがあのふくよかさの原因であったらしい。そのため二十代でその一生を終えた
人も少なくないという。
時代が変われば当然美意識も変わるもので、現代ではスリムなスタイルが好まれ、世の女性たちは、
ダイエットフィーバーのまっただ中にいる。好きなものを自由に食して、必要以上に肥え、成人病な
ど諸病の根源といわれる肥満は、アメリカ等、肉を多量に食べる人々の間で問題となり、ダイエット
がさかんに叫ばれた。日本でも最近食生活の洋風化に伴い、栄養のとり過ぎから太り、体重を減らし
たいという希望の持主は多い。
所変わってアフリカでは、旱魃による食糧危機が報じられ、やせ細った手足と異常にふくれた腹の子
供たちの写真は目をおおうばかりである。五年間も雨の降らない地域もあり、食糧の不足は今世紀最
大とまでいわれ、世界の援助が求められている。
食糧の生産は、その大部分が自然の条件に左右される。豊作はいわば天の恵みと言える。ダイエットを
考えるような豊かな食生活を持っている地域は世界の一部だし、歴史的にも最近のことなのだ。