三十歳を越えた“いい年のおっちゃん”がバイクに乗って走っているのを“中暴族”と言うそうだ。
これは中年暴走族の略である。バイクといっても五〇CCのスーパーカブ等は別だが、頭がスッポリ
入るようなヘルメットをかぶり、ナナハン等を乗りまわしているとやはり暴走族のイメージになるの
かも知れない。しかし暴走族というのは、何十台もが徒党を組んでムチャクチャに走る連中のことを
言うのだろうから、中暴族というのは多分にその年齢を那楡した言葉のようだ。
バイクに乗ることには、車にない自由な感覚と同時に自然との対話がある。暑い時には暑く、寒い時
にはモーレツに寒く、雨が降れば濡れ、風のあおりをまともにくらう。ヒーターとクーラーのある車に
乗っていれば、まさに快適なドライブに違いないし、人間の欲求は当然そうした方向に向かうものだ
と思う。しかし一方では、より体を使い、自然を肌で感じ、野性を守りたいという意識もまた本質的
な人間の欲求ではないだろうか。
急速に日本は高齢化社会を迎えつつあるというのが、統計の示す事実のようだ。そしてその社会は、
何となく老い衰えた活力のない社会となるのではないかという不安がある。管理・統制の世の中で、
もっと自由な個性を発揮し、バイタリティーのある生活をしたいものだと思う。こうした意味で、い
い年をしてバイクに乗るのも大いに奨励したいものの一つだと思うのだが、いかがなものであろう。