1983年 9月
紛争と平和

  今年も冷夏か。との心配を一笑するかのように、八月に入ってからはうだるような暑さの続いた 日本列島だ。今年の夏、日本人の多くをとりまいた話題と言えば、やはり甲子園の高校野球では なかっただろうか。盆休み、ビールを飲みながらの野球観戦。まさに平和の国日本である。

  第二次世界大戦後三十八年、戦争を知らない子供たちが大人になり、平和が当たり前となってい る今日である。しかし、ここ一カ月の間に続発した事件は、平和であることのありがたさを痛烈 に感じ、平和という意味を考えさせられるものがあった。インド洋に浮かぶ楽園の島と思われて いたスリランカで、シンハリ人の多数支配に対し、タミール人たちの民族独立を要求する暴動が 起こった。犠牲者は数百人におよび、家族を失い家を失った人々が明日をどう生きようかと途方 に暮れている。そして、フィリピンにおける野党指導者アキノ氏の暗殺。犯人がでっち上げられ た感じのなんとも歯がゆい事件だ。さらに日本の目の前で、ソビエト空軍機によって大韓航空の 旅客機が撃墜された。領空侵犯によってミサイル攻撃されたという。なんとも血なまぐさい事件 にいきどおりを感じてやまない。

  世界は狭い。しかも地球上にはさまざまな民族、国家が同居しており、争いは今だに絶えていな い。民族にとっての平和、あるいは国家にとっての平和ではなく、人間・人類にとっての平和に ついて考えてみたいものだと思うのだが・・・・


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