1983年 5月
情報を選ぶ

  「赤信号、みんなで渡れば恐くない」こんな言葉が一時茶の間の笑いをさそった。このギャグがなぜおかしい のかは自明である。誰もが悪いことだと分かっているのだが、なぜか集団になると、それほどに思わない。個 人としての感情、理性と相対立する群集心理の矛盾を、ものの見事に指摘しているからであろう。

  人間の意見や感情は、言うまでもなく情報によって支配されている。職場や家庭における情報交換、そしてマ スコミによる大量の情報伝達。こうした情報氾濫の時代、人々は大量情報によって作られた社会や地域の雰囲 気に流されがちだ。「嘘でも百回繰り返せば真実らしく見える」と言ったナチス、ドイツの宣伝相ゲッペルス の言葉はあまりにも有名である。

  選挙の年であるといわれる一九八三年。さまざまな情報が乱れ飛ぶ。金権選挙を批判しながら、金の使い方に よって「やる気」を評価していないだろうか。知縁、血縁、組織ぐるみのまさに群集心理のるつばと化す選挙 だ。情報の真実性を見る目を持ちたいものだ。

  日本人は模倣することにたけ、創造性に欠けているといわれる。これは工業における先端技術の面で象徴され ているが、政治制度としての民主主義という点でも、西洋からの輪入によって形づくられて来た事実はいなめ ない。デモクラシーの本質は、まず個人個人の主体性の確保が前提であろう。政治は人々の生活を大きく左右 するものだ。本物の民主主義を発展させるために、確かな一票を投じたいもの。


戻 る