桜の咲く季節。生まれて初めて手にした教科書を背負い大きな希望とチョッピリの不安を胸に、小学校の
門をくぐる。こうした子供達の姿は今も昔も変わらない。先日、子供の入学説明会で聞いた話なのだが、
「子供の道具、持ち物にはすべて名前を付けて欲しい」とのことだった。えんぴつ、くれよんの一本一本
に至るまでである。
先生の話では、「今は親達が何でも買い与えてしまうので、子供達が物を大切にしな
い。教室には年中えんぴつや消しごむが落ちているが誰も拾おうとしない」という。子の親達が子供の頃
には考えられない状況だ。
熱力学の第二法則に「エントロピーの法則」と呼ばれるものがある。「物質とエネルギーは、一つの方向
のみに、つまり使用可能なものから使用不可能なものへ、あるいは秩序化されたものから無秩序化された
ものへと変化する」というものだ。
現代社会のエネルギーの中心は、石油、石炭といった化石燃料だが、
これらは一度使用してしまえば二度と再生不可能である。現在の豊かな物質社会はこうしたかけがえのな
いエネルギーの高度な消費によって支えられている。化石燃料に変わりうるエネルギーの開発見通しが困
難な今日、次の子の世代には、豊かさの発展が常識でない時代となるかも知れない。
子は親の言い付けは守らないものだが、親のすることはひとりでに行うものだ。「省エネ」が叫ばれる昨
今、物を大切にすることの意味を親の立場で再考してみたい。