1983年 1月
スペース・コロニー

  宇宙時代の幕開けと言われてからもう久しい。人工衛星による気象観測や通信網の拡大など、宇宙空間はすでに さまざまな面に利用されている。ボイジャーは土星の果てまで飛び、電波望遠鏡は百六十億光年以上もの彼方か ら発せられた光をとらえている。

  しかし日常生活に立ち返ってみると、まさに我々は地球という平面の世界に閉じ込められた生活があるばかりだ。 そして地球には、資源・エネルギーの枯渇、人口・食糧問題、環境の汚染等、人類の前にいくつもの壁が立ちそ びえている。こうしたことから未来学はどうしても悲観論が主流だ。

  ここに一人の物理学者ジェラード・K・オニールという人がいる。彼はすでに十年以上も前から、スペース・コロ ニーへの移住ということを提案してきた。すなわち、無限に等しい宇宙空間に、太陽エネルギーを利用した居住区 を作り、人類がそのコロニーで生活するというものである。彼の主張によると、月の資源を使い、現在の科学力 で十分実現可能であるという。

  こうした考えは、地球という枠内でいわば閉鎖系の中にいる人類を、宇宙という開放系に解き放つものである。 いささか楽観的すぎるかも知れないが、こうした方向こそが、現在人類のかかえている難問を解決する最良の方策 ではないだろうか。

  言うまでもなく、一年というのは地球が太陽の周りを一回転する時間だ。年の始めは地球がもう一周りしようとい う旅立ちの時である。一九八三年の今、人類の将来を宇宙について考える、意識の旅立ちとしたい。


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