1982年 9月
天災か人災か

  今年の梅雨は長かった。気象庁の発表では、ここ数年、梅雨入りが早くなり、梅雨明けが徐々に遅くなってきて いるということだ。つまり梅雨の期間がだんだん長くなっているのだが、今年はなんと八月に入って、一日に梅 雨明けという、八月明けの記録をつくった。そして梅雨明けとともに台風10号が本土を直撃。大きな被害をもた らしたことは記憶に新しいところである。この台風被害の中で最大のものは、家屋の破壊とともに人をも埋めつ くしてしまう、山くずれ、鉄砲水であろう。悲惨なニュースが連日報道された。

  人の歴史は、常に自然との戦いであり、自然を変革し続けてきた。そして、今日の工業化社会、豊かな物質文明 というものの中に生活している我々は、ややもすると、すでに自然を征服してしまったかのような錯覚に陥りや すい。しかし、自然の力は偉大だ。自然の膨大な時の流れ、今も拡大し続けている果てのない宇宙の拡がり。こ うしたスケールの大きな自然に対して、人類の成し得たことは微微たるものであろう。地球という惑星上の自然 の出来事に対しても、人類はまだ、圧倒的な支配力を勝ち取ることはできていない。時々、地震や台風などの自 然災害をうけるたびに反省させられる。もちろん、ただ単に自然を恐れることはおろかなことであろう。だが、 ここで考えなければならないことは、人間の都合ばかりを考えて自然をあまく見ると、しっぺ返しを食うという ことだ。

  先日の台風災害にしても、山の木を伐採してしまったり、土をけずったりして危険な場所に安易に住宅を造った ことが、被害を大きくしたと言えるのではなかろうか。とかく異常気象が叫ばれる今日、そして本格的な台風シ ーズン、天災が人災とならないように願ってやまない。


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