1982年 4月
判 定 勝 ち

  勝負というものが、最も原始的な形でスポーツに反映されているのがボクシングだと思う。狭いリングの中で、 一対一で戦うこの競技は、ノックアウトの決着によって、大きな興味を誘われるものだ。人間に限らず、生物の すべてが、何らかの争いの渦中で生活している事実は否定しがたいものだと思うが、最も、単刀直入なのが、い ってみればボクシングファンかもしれない。

  先日、ボクシングの世界タイトルマッチが行われた。薬物問題などで揺れるボクシング界だが、この渡嘉敷勝男 の第一回タイトル防衛戦も、見ているファンを大いに不思議がらせた一戦であろう。

  勝負というものは、本来勝ち負けが、はっきりしなければ面白くないものだ。角界で高見山という大型人気力士 がいるが、彼の人気の一つは、その圧倒的な負けっぷりの良さということがあるのではないだろうか。

  ボクシングの場合、ノックアウトでの決着は、誰の目にもあきらかだがその判定の不透明さには、言いようのな いものがある。解説者が、「かなりのポイント差で負けている。最後のノックアウトをねらうしかない。」等々、 悲観的な感想を言い続けて試合終了。そして、フタを開けて見たら、なんと判定勝ちでタイトル防衛である。想 像力のたくましい人は、「薬でだめなので、レフリーに金でも贈ったのだろう。」と、あきれた感想をもらす。 ファンを失って、タイトルを防衛しても、ショウとしてのスポーツでは意味がないと思うのだが…………。


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