当農協にも、はじめて女性の管理職が、支所長として生まれた。これは合併十三年間を含め、戦後、当地域に農協が
生まれてから、はじめての出来事だ。
職員が百五十人おり、そのうち三分の一が女性で、管理職は全体で三十人もいるのだから、そのうちの一人ぐらいは
女性であっても何の不思議もない。しかし、はじめてということで、一つの話題を呼んだ。
「戦後強くなったものは、女と靴下だ。」と一時期よく言われたものだ。しかし、圧倒的に強くなったと誰もが認め
る靴下と違って、「強くなった女」というものは、あまり実態がなかったように思う。確かに、女性の職場進出によ
って、一定の社会的地位の向上がはかられたと思うが、現実は依然として男中心の社会である。ときどき男女間の不
平等を問題にした争いが見られるが、一般社会の中では、争いにならず、女性が妥協してしまうことの方が多いので
はなかろうか。
人間の感情というものは、極めて環境と習慣に支配されやすいものだ。本来的な意味で、当然疑問視してもよい事柄
でも、習慣の中に埋もれてしまうことが多い。たとえば、共働きの夫婦でさえも、男が家事をしていれば、男にも、
女にも、なんとなくしっくりこない感情が残る。
差別を廃し、男女間の正当な意味での社会的分担のあり方と、本来の力をそれぞれの個性が発揮できる環境をみんな
の力で、つくって行きたいものだと思う。