1982年 1月
十 年 一 昔

  新しい年を迎えた。人それぞれの人生の何らかの節目であろう年の変わりは、何か感慨深いものがある。しかし、 それぞれの年代によって、新しい年を迎える感情というものには、かなり異なるものがあるようだ。

  人間だれでも子供のうちは、早く大人になりたいと思うだろう。(最も最近は子供のままでいたいなどという者も いるらしいが)早く社会の一員として認められたい。規制された子供の社会から早く抜け出し、一人前の人間とし て活躍したいと思うのは当然のことであろう。だが十代から二十代に二十代から三十代に………こうした発想は姿 を消し、やがて年をとることに不安やいらだちすらも感じるようにもなってくる。二十代・三十代・四十代・五十 代それぞれこの差は十年であるだけに、こうした年まわりに当たった人は一つ年をとるということが重大になる。

  「十年一昔」とはよく言われることだが、最近では何もかもがスピード化した時代であり、時代の進歩という点で は、昔の十年は今の一年ぐらいに相当するかも知れない。また一方では、平均寿命が伸びるなど、いろいろな意味 で、人に一生はますます長いものになりつつある。

  新年に当たり、振り返ってみた過去が、自分にとって納得のできる、足跡のある人生にするために、二十代の人は 三十歳を三十代の人は四十歳を四十代の人は五十歳を………というふうに、十年ぐらいを単位とした目標を設定し、 忘れべからざる「初心」というものを考えてみたい。


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