1981年 9月
アマ と プロ

  「名人」「本因坊」という囲碁界の二大タイトルを、若干二十四歳で手にした男が生まれた。韓国生まれの趙治勲 という男である。彼は六歳の時、来日して以来、もう二十年近い年月を日本で過ごし、碁界のトップをめざし、努力を 続けてきた。

  碁とか将棋というゲームは、我々、アマチュアの間では、趣味として大きな楽しみになっているものだが、プロの世界 とは、まさに想像を絶するものがある。彼は四歳の時、碁を打ちはじめ何と五歳の時すでに、アマチュアの五段ぐらい の実力を持っていたという。その彼が日本に来て、十一歳という最年少記録を打ちたてて入段。(プロでもアマチュア でもその実力は段・級で表すが、プロの段とアマチュアの段では、圧倒的な違いがあり、アマチュアの五段では、とて もプロの初段にはなれない。)その後、順調に昇段して、この栄冠を獲得している。

  アマチュアとプロの差というものを極端に見せつけられるのがこの世界だ。一般の人々は、それこそ一生かかっても、 アマ五段になるというのは、かなりの実力者で、普通はアマ初段、二段止まりである。むろん、名人などというのは、 天才と言ってしまえばそれまでのことだ。

  最近、プロ意識というのが、とかく云々されているが、誰しも生きていく中で、自らの職業というものは、プロでなけ ればならないと思う。この仕事であれば、この仕事に対しては、「私はプロである」という自覚を持って、取り組める ものを持ちたいものだと思う。


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