1981年 6月
二つの時間

  「時間」というものには、二つの種類があるそうだ。一つは過ぎ去った時間であり、もう一つは過ぎようとしている時間である。 日々の生活に忙しい我々だが、また一方では、ナノセカンド(十億分の一秒)を単位として動くコンピューターの開発、発展。 はたまた、スペースシャトルに代表される宇宙時代の幕開けといわれる時代に生きている我々でもある。ここで「時間」について少し考えてみたい。

  ニュートン以来の絶対時間という概念を見事に打ち破り現代物理学の基礎を築いたのは、若干二十六才の若きアインシュタインであった。 彼は運動の速度と時間の関係を説いた。その光速度という、とてつもないスピードとは日常縁のない我々であり、常識というものは今だニュートンの時代であると言えるだろう。

  ただ、こうした我々でも、二つの時間の違いは感じることができる。非常に忙しい日を送っている人は、その時点では時間を短く感じ、アッという間に一日が過ぎてしまう。 しかし、その時間が過ぎ去ってしまえば、まさに充実した日々をすごした満足感にみたされ、過去の時間を長く感じるだろう。 逆にマンネリの中に日々を過ごした人は、その時は、時間を長く感じるが、そんな日々を過ごしてしまえば、何も残らない人生を早いものだと感じるだろう。

  昔から「光陰矢のごとし」といわれるが、年をとるごとに時間のスピードは早くなるようだ。人生をなるべく長く生きたいものだと思う。


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