一九八一年。今年は国際障害者年である。サリドマイド児をはじめとする薬害による人々。また交通戦争とまで叫ばれる時代でもあり、
交通事故による障害者の激増等、社会の成長にともない、そのかくれた側面としての障害者の問題は、今日、大きな社会問題としてクローズアップされている。
先ごろNHKで「旅立とう今、こずえさん二十才の青春」という番組が放映された。ごらんになられた方も多いと思われるが、両手のないサリドマイド児の『吉森こずえさん』の二十才になるまでのドキュメントである。
五体満足の一般の人々には、まさに想像を絶する生きざまがそこにあり、涙をさそわれると同時に、人間はいかに生きるべきかを考えさせられる姿があった。
彼女は通常の人が手ですることを足でするのである。もちろん字を書き、服を着、洗たくや料理すらもできるのだ。人並みに生きてゆこうとする懸命の姿に、感動の拍手を送りたい。
彼女の人生はもうすでに二十年である。二十年間、彼女は手のない生活をしいられてきた。今年が国際障害者年であることなど、むろん彼女にとって何の意味もないことであろう。これからも一生彼女は障害者として生きてゆかねばならない。
ともすれば五体満足の我々が、小さなことに不満をいだき、自暴自棄になりがちな今日。障害者である人々が、まさに人並みの生活をするために払っている懸命の努力を、その立場に立って考えてみたいものだと思う。