「第三の波」という本がアメリカで出版され、ミリオンセラーとなった。そしてこの「波」が日本にも上陸して来た。一九八〇年のことである。
この本は、これまでの人類の歴史をマクロ的な立場から分析し、未来の社会の姿を、展望のある人間社会として提示している。
最近の未来学の分野では、今日の社会のさまざまな危機的状況から、悲観的立場に終始するものが多い。さまざまな悲観論が未来学の分野を凌駕してきた。
中には中世の予言者の言葉を借りた『ノストラダムスの大予言』といったものまであり、一九九九年の七月に世界は滅亡するというショッキングな内容でマスコミ界をにぎわした。
たしかに今日、我々をとりまく状況は危機的である。世界的規模で進行している環境の破壊、核戦争の不安。エネルギー、食糧等、生活の根幹にかかわる難問が山積みしている。
人類の歴史は、第一の波(農業革命)第二の波(産業革命)によって大きな変貌をとげてきた。そしてこれに続く第三の波によって、人類の生活はまた根本的な変化をとげる。
いや、変化せざるを得ない。「もちろん、この過程では、いろいろな困難を伴うであろうが、その先には、まさに人間中心、人間尊重の社会が、現代の高度なテクノロジーにささえられて実現できる」と作者A・トクラーは述べている。
『一年の計は元旦にあり』とよく言われるが、一九八一年の年頭にあたり、十年、二十年後の将来を考える一助として、この『第三の波』の一読をおすすめしたい。