米価の季節、全国の米作農民の願いを結集した五十五年度要求米価、一万九千七百六十九円、この要求は農家の願う最底の要求ではなかろうか。しかしこの二年間、全体としては食糧の自給率が低下してゆくなかで、据え置きが続いている。
余剰米をいかえた政府は、その赤字を三Kの一つにまで数えるようになった。マスコミも米価値上げに対する批判を展開して「米価が高すぎるのではないか。」といったムードが一部に出てきている。
米の価格がとかく議論されているが、ここで戦後の米価の推移を見て見よう。
終戦直後にはかなりの混乱があり、二十一年、60kg当たり二百二十円〜二十五年、二千六十四円とこの間十倍近くなったが、この時期は、ヤミ米が横行し、その価格は六千円〜八千円であったといわれている。
そしてほぼおちついた二十六年、二千八百十二円である。昨年の米価は、一万七千二百七十九円であり、二十八年間で六倍となった勘定だ。
日本は世界に例をみない高度経済成長をなしとげた国として有名だ。敗戦から立ち上がり、戦後三十年の間に、世界第三位の国民総生産を誇るにいたった。
戦後、農民はあらゆる努力を払い米の生産を続けてきた。あるものは出稼ぎをしながら、あるものは経営の合理化をはかりつつ。こんな農民のささやかな要求である一万九千七百六十九円が、国民の合意となって、決定して欲しいものである。