小学校6年生の時、はじめて天体望遠鏡を買ってもらい月を眺めてみたとき、本当にたくさんのクレーターが痘痕のように見え 感動したことを今でもよく思い出す。それ以来、宇宙のことが好きになり天文に関する書物を30歳ごろまでよく読んでいた。 そしてここ30年、日々の仕事や生活に追われ、久しく宇宙のことは忘れかけていたが、還暦を機会にもう1度宇宙について考えて見たいと 思うようになった。きっかけは東大宇宙機構の村山斉教授の「宇宙は何でできているのか」を書店で見つけ読んでみたことである。過去の記憶が蘇り 以来、数十冊の関連本を読んでいる。
最近の宇宙関連本、30年前までは全く触れられていない、新しい言葉がたくさん出てくる。その最たるものが「ダークマター」「ダーク エネルギー」である。我々の住んでいるこの宇宙の質量は、目に見える物質(星々や星雲ガス等)は全体の4.4%ほどしかなく、ダークマターが 23%、ダークエネルギーは73%もあるという。ダークと言われるこれらの質量は現代科学をもってしてもいまだ謎なのである。
近年の宇宙観測は飛躍的に進み、銀河の回転速度を調べて見ると、内側も外側も同じ速度で回転しているという、これまでの常識(太陽系の惑星 の運行に見られるように内側は早く外側は遅い)を覆すものであった。こうした事実は銀河を取り巻く膨大な何者かがあると仮定しなければ 説明がつかないという。そしてさらにもう1つ、宇宙が膨張していることは天文学者ハッブルによって実証されていたが、最近の観測では この膨張が加速度的であるというのだ。星々には万有引力があり、宇宙は徐々に収縮するはずである。この収縮力を上回る排斥力が宇宙にあり、 このエネルギーがダークエネルギーだという。30年離れて帰ってきたら、まさに「浦島太郎」のようである。